HDR撮影・オートガイドの赤緯Agr・SharpCapの導入補正

12月に10年ぶりの海外旅行に行ったこともあり、11月から12月は晴れた日が少なかったためもあり、撮影機会はこのところ少なくなっていました。

それでも分かったことはいくつかあります。オートガイドの改善・左上の星像の改善・SharpCapの活用・HDR撮影などです。

オートガイドの改善
ハンチングをなくすために、赤緯側のオートガイドはEQM-35 ProでもAZ-GTiでも、なしにしたことはこれまでに書いた通りです。しかし、その後でAZ-GTi71FL+ASI 294 MCを試しているうちに、極軸をしっかり合わせればハンチングが起きないことが分かりました。

このときのPHD2の設定は、AZ-GTiについてわかりやすい解説をしているdavidparksさんのものです(Cloudy Nightsというフォーラムに多く投稿しています)。これまで赤緯側のAgr(アグレッシブ)はできるだけ低く(40程度)にしていました。しかし、davidparksさんは、これを100と高くしていました。

これでうまくいくのですから、EQM-35 Proでもできるはずです。ドリフトアライメントでできるだけ極軸を合わせて試してみると、ディザリング(赤経側のみですが)をしても、ハンチングは起きません。

最初はAZ-GTi と同じようにEQM-35 ProSynscanWiFi)で接続してみました。問題なくガイドできまるようになりました。Agr100になっています。

EQMODSynscanでは、ネイティブなSynscanの方がSkywatcherの赤道儀がうまく動くのではないのではないでしょうか。

しかし、問題はWiFiが途切れることです。USB3.0ケーブルやハブをUSB2.0に変更しましたが、同じでした。ベランダではいろいろな電波が飛び交っているからでしょうか。

結局、有線のEQMODに戻しました。多少ガイドは乱れるようですが、Agr100のせいだろうと思いますが、結構うまくいきます。極軸合わせが甘いと多少ハンチングはおきますが、10秒ほどで自動復帰します。

これであれば5分以上の露出ができますし、撮影が始まれば放っておけます。リモートデスクトップにすれば、全くベランダへ出る必要はなくなります。

少なくとも私の赤道儀では「バックラッシュが大きくても、アグレッシブは高く設定した方が良い」ということが分かりました。

SharpCapの導入補正など
AZ-GTiQHY5L-IIMで極軸合わせをするには、SharpCapが一番手っ取り早くできることは分かってきました。またSharpCapではプレートソルビングもできることも分かりました。

これまで赤道儀のアラインメントは、APTAstro Photography Tool)のポイントクラフトを使って導入し、その結果を赤道儀に同期していましたが、APTがバージョンアップしてから、選択できる天体が増えて、天体の選択が特に面倒になりました。

SharpCapでは、赤道儀から受け取った位置情報と、撮影した映像の位置情報を照らし合わせ、その差分を赤道儀に知らせて補正します。そのため、ステラリウムで導入してSharpCapで補正すれば良く、APTで上のようなオブジェクトブラウザーから目的の天体を選ぶ必要はなくなります。グラフィカルに(直感的に)導入できます。

当初はSharpCapがなかなかプレートソルブしてくれず、たまにうまくいっても補正をしてくれずに悩みましたが、次のようにすればよいことが分かりました。
① 露出時間を4秒以上にする
② プレートトソルブはメニューではなく、Scope Controlsを使う

最初はレスポンスを良くするために、露出時間を2秒程度にしていましたが、光害地ではこれでは無理なことが分かりました。また上のようにメニューからPlate Solveを選ぶだけだと、プレートソルブをして終わってしまいます。

上の画面右下のScope Controlsから「STOP」の左下の、丸いアイコンのボタンを押すことで、プレートソルブと補正の両方をしてくれるようになりました。

もちろん次のように「プレートソルブ後に赤道儀と同期し、必要なら再補正をする」という設定をチェックしておかなければなりません。

何回か試しましたが、ほとんど1回で補正が終わりました。APTと比べて、操作が分かりやすいだけでなく、かなりの時間短縮になりました。

ピント合わせも、SharpCapの方が便利であることが分かりました。APTのライブビューではCMOSカメラのズーム機能がないのに対し、SharpCapでは無段階でズームができるためです。露出時間を2秒程度にして反応を早くし、ズームアップすれば、APTのBartinov  Aidのような機能を使わなくても、正確にピント合わせができると思います。

星像の乱れの改善
Canon EOS Kiss X5の画面左側(特に左上)の星像が流れていました。Borgのサイトに「APS-Cの場合は、逆に本来の目盛から0.51.5mm程度伸ばすとAPS-Cの最周辺像が改善します。」という記載がありました。

これで試したところ、次の上の画像から、下の画像のように星が点になりました。いずれも雲が出てきて、数分しか露出できなかった、異なる天体の左上等倍画像です。


ところが、ASI 294MCではこれでも左上の星像が多少流れます。ASI 294MCはマイクロフォーサーズですので、それが影響しているのでしょうか。もう一度フランジバックを計測し直し、必要ならスペーサーを入れ、さらにフラットナーの位置を調整してみます。

HDR撮影と画像処理
1227日は珍しく快晴でしたので、オリオン大星雲のHDR撮影に挑戦しました。10秒、30秒、60秒、180秒、300秒をそれぞれ20枚前後撮影しようとしましたが、最後はベランダの仕切りで中断しなければならず、またハンチングや飛行機の画像を取り除くと、300秒は7枚だけでした。合計で約2時間です。

PixInsightではファイル名で露出時間の異なるライト画像とダーク画像を対応させてくれますので、次のようにまとめてコンポジットできます。

その後、複数のコンポジット画像をStarAlignmentで位置合わせをして、HDRCompositionでコンポジットし、ストレッチしてからHDRMultiscaleTransformで飽和している部分を復元します。

周辺(特に左側)をトリミングし、星マスクと星雲マスクを使って、ノイズリダクションと彩度の調整をした画像です。

M422019/12/27、横浜市神奈川区、鏡筒:Borg 71FL+マルチフラットナー1.08×DG、フィルター : サイトロンQuad BP、カメラ:ZWO ASI 294MC Pro0度)、露出時間:約2時間、ディザリングあり(RAのみ)、赤道儀 : EQM-35 ProASCOM + EQMOD)、オートガイダー : QHY CCD QHY5L-IIM + ミニ・ガイドスコープセット、画像処理:PixInsightのみ(Bias, Dark, Flat補正を含む))

まだ、分子雲がはっきり見えず、色もどうも変ですが、初めてのHDR撮影はある程度うまくいったのではないでしょうか。これまででは一番良く写っています。

しかし、人工衛星の軌跡はどうしても残ります。ステライメージではシグマクリッピングでコンポジットするときれいに消えたのですが、PixInsightで同様にシグマクリッピングを選んでも、多少残ってしまいます。ネットで調べているのですが、どうもよく分かりません。

これから
ベランダからでは、一晩で撮影できる時間は限られます。複数日で撮影するには、毎回正確にカメラを回転させなければなりません。そうしないとアラインするときに、どうしても削られてしまう部分が出てきます。回転装置に目盛りがなく、現在は目分量で回転させていて、どうしても正確に合わせられません。皆さんはどうしているのでしょうか。

AZ-GTiの撮影機会がなかなかありません。71FLASI 294MCまたはEOS KISS X5を使ってうまく撮影ができることが分かれば、71FLAZ-GTi専用にして持ち出そうかと思います。Red Cat 51は候補から外れてきました。

ベランダからの撮影は、もう少し大きな望遠鏡でやってみたいという気持ちになっているからです。以前は20cm程度のシュミカセをと考えていましたが、赤道儀もグレードアップする必要がありますし、借家住まいにはこれでも荷物が増えて動きにくくなります。

10cm程度の新しい屈折をとも考えましたが、新たな鏡筒を買えば、フラットナーや鏡筒バンドなどを新たに揃える必要があり、結構高くなります。

どうせ高くなるなら、Borg 107FLはどうかと考えるようになりました。確かに高価ですが、その他の機器がそのまま使えますし、107FL対物レンズはそのまま、今の小さい除湿ケースに入れることができます。荷物がそれほど増えず、これが最適なソリューションではないかと、自分に言い聞かせています。

※追記(2020/1/4)
昨日はシーイングは良くなかったのですが、これまで二日間撮った「燃える木」と「馬頭星雲」をもう一度撮ってみました。APTで、前回撮影した位置は覚えさせているのですが、やはり角度がいい加減なせいで、次のように過去の二日間の画像はずれています。


それでも、ImageIntegrationで合成してクロップすると、トータルで5時間かけたせいで、ストレッチしてノイズ削減をしただけですが、かなりくっきりと見えるようになりました。

なお、ImageIntegrationは最低でも三つのファイルが必要で、二つの場合はそれぞれのコピーを作って四つにするか、Pixelmathで(A + B )/2の演算をする必要があるとのことです。

※追記(2020/1/4)

回転角度については、APTのポイントクラフトでプレートソルブをした後に、SHOWボタンを押せばよいことが分かりました。これによってステラリウムにフレームが表示されますので、赤経または赤緯にぴったりと合うまで、撮影、プレートソルブ、SHOW、回転調整、を繰り返せばよいわけです。今後は毎回これで角度を調整するようにします。

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