パソコンの高速化とPixInsightのPCC
PixInsightを使ううちに、どうも処理が遅いと感じるようになりました。考えてみると、画像処理に使うデスクトップはCPUがCore i3 2120(第二世代)でした。もう8年近く使っていますが、Windows 7からWindows 10まで安定して動作していましたので、アップグレードの必要性が感じられなかったのです。しかしここが潮時です。交換することにしました。
② 51枚のBiasファイル(EOS CR2)のIntegration
この現象をPIのフォーラムで検索すると、同じようなスレッドがありました。スレ主は、White referenceが合っていないのではないかという質問をしていました。しかし、それに対するPIのスタッフの返答を見ると、デフォルトのAverage Spiral Galaxyで「全ての」天体写真がカラーキャリブレーションできるというものでした。さらに、PIのサイトでPCCの使い方をよく見るようにというものでした。
以前にPixInsight(PI)のPhotometricColorcalibration(PCC)を実行すると、奇妙な色になることについて書きました。特に画像品質が良くない場合や、DeepSkyStacker(DSS)でコンポジットした画像は、青色になることが多く、PIでの処理を諦めていました。しかし、調べてみると設定がいい加減だったことがわかりました。
CPU・マザー・メモリの交換
これまではCPU・マザー・メモリで3万円という基準を設け、格安のパソコンをいくつも作ってきました。しかし今回はちょっと奮発して、4万円で組んでみることにしました。選んだのは次のパーツです。
CPU : Core i5 8400(第八世代)
マザー : GIGIGABYTE H370 HD3ATX
メモリ : CORSAIR DDR4-2666MHz 8GBx2枚
CPUスコアは、あるサイトによればi3 2120が3891、i5 8400が11700とのことですので、ちょうど3倍になります。メモリはそれほど速くはならず、HDDは同じですので、全体としてはここまではいかないかと思います。
PIの速度測定
交換前のCore
i3 2120で、特に時間がかかる次の処理について測定しました。
① StarNet++による星雲マスク作成(Stride=64)
19:10.06 (1150秒)② 51枚のBiasファイル(EOS CR2)のIntegration
11:04.03 (664秒)
③ 20枚のライト画像のBPPによるコンポジット(Bias, Dark, Flatはマスター)
09:54.07(594秒)
交換後の速度は次のようになりました。いずれも速さが2倍を超えていて、これでPIに掛かる時間を大幅に短縮できます。
① 06:47.17 (407秒)= 2.83倍
② 05:19.84 (320秒) = 2.10倍
② 05:19.84 (320秒) = 2.10倍
③ 04:21.51
(262秒) = 2.27倍
StarNet++はほとんどの処理がCPUに依存すると思われるため、CPUスコアの差である3倍に近い値になっています。一方、ファイルアクセスが多い②と③はそれほど速度が上がっていません。なお、StarNet++のStrideを128にすると、2分ほどで終了しますので、通常は128で良いのではないかと思います。
HDDから半導体デバイスへ
HDDを使わなければ速度が上がるはずですので、作業領域を指定できる、上の②のコンポジットで検査してみました。最初に作業領域をCドライブのSSDにし、次にRamdiskを作ってそこに割り当てたものを測定しました。この作業に必要な容量は約8GBでした。
②-1 作業領域:SSD(20枚のライト画像のBPPによるコンポジット)
04:02.55(243秒) = 2.44倍
②-2 作業領域:Ramdisk(20枚のライト画像のBPPによるコンポジット)
03:58.85(239秒) = 2.45倍
いずれも、HDDより10%近く速くなっています。SSDとRamdiskの差は大きくはないものの、Ramdiskが確実に速くなりそうです。またSSDを毎回8GBも作業領域として使うのは、精神衛生上よくありませんので、メモリを増設してRamdiskを作るという方法が良さそうです。
Ramdiskを作るために、フリーソフトのImDiskを使いました。英語版ですが、操作がわかりやすく使いやすそうですし、動作も安定しているようです。
速度アップの恩恵
パソコンのアップグレードをして良かったことは他にもあります。Wordのスクロール速度の向上です。100ページ超の文書で、マウスではなく矢印キー(実際にはショートカットキーを使っていますが)でスクロールすることがよくあります。これまでは、カクンカクンとしていたのですが、スーッと動くようになりました。昔のテキストエディタのようです。
ただ残念なのは、かな漢字変換のATOKが使えなくなったことです。制限の台数を超えたためだと思われます。この際これも替えることにしました。単語登録情報はときどきファイルに出力していましたので、あまり問題はありません。MS-IMEとGoogle日本語入力を比較し、後者にすることにしました。ショートカットキーの割当がATOKと同じであり、全く違和感がありません。
PIの PhotometricColorcalibration(PCC)の色
以前に、DeepSkyStacker(DSS)でコンポジットした画像を、PhotometricColorcalibration(PCC)で、カラーキャリブレーションすると、妙な色になったと書きました。特に青い色が強くなり、カラーバランスを揃えると次のようになりました。
このときの、PCCのパラメーターは、Image Parametersは正しく設定したものの、それ以外はデフォルトのままでした。
PIの PCCのパラメーター
さっそくPIのサイトを見ると、次のような指示がありました。そういえば、蒼月城さんのビデオでも、同じようなことをされていたのを思い出しました。
① Photometry
ParametersのSaturation Thresholdの値を、飽和している場所より低くする
② Background
NeutralizationのUpper Limitの値を、バックグラウンドより大きくする
上の二つを変更して次のように設定しました。Upper Limitの値が大きいのは、画像の品質が悪く、バックグラウンドが十分に暗くなっていないためです。
これで、カラーキャリブレーションをすると次のようになります。カラーバランスを合わせていても、妙な色にはなりません。
ライト画像が少ないのと、フラット画像が合っていないため、ひどいものになっていますが、カラーキャリブレーションの問題は解決しました。どんな画像でもPCCが使えれば、ものによってはDSSやFlatAide
Proなども使うことが可能になります。
これから
Ramdiskでシステム全体の高速化も図れるし、メモリも安いので8GBx2を注文しました。PIの作業領域だけでなく、Windowsのtempファイルや、Chromeのキャッシュなどもここに割り当てようと思います。
ImDiskは、Windowsが立ち上がってから動き出すので、ページファイルを割り当てることはできないとのことです。しかし、メインメモリを20GB程度にしておけば、メモリスワップは私の使い方では起きそうもありませんので、問題はありません。また、スワップが起きなくてもページファイルが使われ、パフォーマンスが落ちるという記事もありましたので、ページングは無効にしようと思います。
高速化したこともあり、PixInsightを気軽に動かせるようになりました。どんな問題も、ネットで検索すれば解決のヒントが見つかります。それらの解決法をPixInsightで何度も試すことができます。これからは適当にやらないで、少しずつ課題を解決しながら、着実に上達していければと思っています。
※追記(2020/2/3)
ページングを無効にしたら、PixInsightで50枚のバイアスをインテグレートしているときにエラーが起きました。タスクマネージャーでメモリのパフォーマンスを調べると、あっという間に32GBを使い切っていました。ページングは有効にするよう戻しました。
※追記(2020/2/3)
ページングを無効にしたら、PixInsightで50枚のバイアスをインテグレートしているときにエラーが起きました。タスクマネージャーでメモリのパフォーマンスを調べると、あっという間に32GBを使い切っていました。ページングは有効にするよう戻しました。
はじめまして。先日ブログにコメントをいただきました、そらちゃぐと申します。
返信削除Pixlnsightというソフトは初めて知りました。とても参考になります!
ちなみにすごい写真ですね!とても足元にも及びませんが、是非参考にさせてください。
ちなみにナローバンドに挑戦なさるとのことですが、やはり難しいのでしょうか?
そらちゃぐさん、申し訳ありませんでした。コメントの承認の仕方がわかっておらず、3年も経ってしまいました。ナローバンドは、環境が変わったので、いったん諦めてカラーカメラにしました。しかし最近Askar Color MagicのD1とD2フィルターを入手しましたので、カラーカメラで再度ナローバンドに挑戦しようと思っているところです。重ねてお詫びいたします。
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