パソコンの高速化とPixInsightのPCC

PixInsightを使ううちに、どうも処理が遅いと感じるようになりました。考えてみると、画像処理に使うデスクトップはCPUCore i3 2120(第二世代)でした。もう8年近く使っていますが、Windows 7からWindows 10まで安定して動作していましたので、アップグレードの必要性が感じられなかったのです。しかしここが潮時です。交換することにしました。

以前にPixInsightPI)のPhotometricColorcalibrationPCC)を実行すると、奇妙な色になることについて書きました。特に画像品質が良くない場合や、DeepSkyStackerDSS)でコンポジットした画像は、青色になることが多く、PIでの処理を諦めていました。しかし、調べてみると設定がいい加減だったことがわかりました。

CPU・マザー・メモリの交換

これまではCPU・マザー・メモリで3万円という基準を設け、格安のパソコンをいくつも作ってきました。しかし今回はちょっと奮発して、4万円で組んでみることにしました。選んだのは次のパーツです。
         CPU : Core i5 8400(第八世代)
         マザー : GIGIGABYTE H370 HD3ATX
         メモリ : CORSAIR DDR4-2666MHz 8GBx2
CPUスコアは、あるサイトによればi3 21203891i5 840011700とのことですので、ちょうど3倍になります。メモリはそれほど速くはならず、HDDは同じですので、全体としてはここまではいかないかと思います。

PIの速度測定

交換前のCore i3 2120で、特に時間がかかる次の処理について測定しました。
① StarNet++による星雲マスク作成(Stride=64
         19:10.06 (1150秒)
②  51枚のBiasファイル(EOS CR2)のIntegration
         11:04.03 (664)
③ 20枚のライト画像のBPPによるコンポジット(Bias, Dark, Flatはマスター)
         09:54.07594秒)

交換後の速度は次のようになりました。いずれも速さが2倍を超えていて、これでPIに掛かる時間を大幅に短縮できます。

① 06:47.17 (407秒)=   2.83倍
② 05:19.84 320秒) =      2.10
③ 04:21.51 262秒) =      2.27        


StarNet++はほとんどの処理がCPUに依存すると思われるため、CPUスコアの差である3倍に近い値になっています。一方、ファイルアクセスが多い②と③はそれほど速度が上がっていません。なお、StarNet++のStrideを128にすると、2分ほどで終了しますので、通常は128で良いのではないかと思います。

HDDから半導体デバイスへ

HDDを使わなければ速度が上がるはずですので、作業領域を指定できる、上の②のコンポジットで検査してみました。最初に作業領域をCドライブのSSDにし、次にRamdiskを作ってそこに割り当てたものを測定しました。この作業に必要な容量は約8GBでした。

-1 作業領域:SSD20枚のライト画像のBPPによるコンポジット)
         04:02.55243秒)         =       2.44
-2 作業領域:Ramdisk20枚のライト画像のBPPによるコンポジット)
         03:58.85239秒)         =       2.45

いずれも、HDDより10%近く速くなっています。SSDRamdiskの差は大きくはないものの、Ramdiskが確実に速くなりそうです。またSSDを毎回8GBも作業領域として使うのは、精神衛生上よくありませんので、メモリを増設してRamdiskを作るという方法が良さそうです。

Ramdiskを作るために、フリーソフトのImDiskを使いました。英語版ですが、操作がわかりやすく使いやすそうですし、動作も安定しているようです。


速度アップの恩恵

パソコンのアップグレードをして良かったことは他にもあります。Wordのスクロール速度の向上です。100ページ超の文書で、マウスではなく矢印キー(実際にはショートカットキーを使っていますが)でスクロールすることがよくあります。これまでは、カクンカクンとしていたのですが、スーッと動くようになりました。昔のテキストエディタのようです。

ただ残念なのは、かな漢字変換のATOKが使えなくなったことです。制限の台数を超えたためだと思われます。この際これも替えることにしました。単語登録情報はときどきファイルに出力していましたので、あまり問題はありません。MS-IMEGoogle日本語入力を比較し、後者にすることにしました。ショートカットキーの割当がATOKと同じであり、全く違和感がありません。


PI PhotometricColorcalibrationPCC)の色

以前に、DeepSkyStackerDSS)でコンポジットした画像を、PhotometricColorcalibrationPCC)で、カラーキャリブレーションすると、妙な色になったと書きました。特に青い色が強くなり、カラーバランスを揃えると次のようになりました。

このときの、PCCのパラメーターは、Image Parametersは正しく設定したものの、それ以外はデフォルトのままでした。

 この現象をPIのフォーラムで検索すると、同じようなスレッドがありました。スレ主は、White referenceが合っていないのではないかという質問をしていました。しかし、それに対するPIのスタッフの返答を見ると、デフォルトのAverage Spiral Galaxyで「全ての」天体写真がカラーキャリブレーションできるというものでした。さらに、PIのサイトでPCCの使い方をよく見るようにというものでした。

PI PCCのパラメーター

さっそくPIのサイトを見ると、次のような指示がありました。そういえば、蒼月城さんのビデオでも、同じようなことをされていたのを思い出しました。
① Photometry ParametersSaturation Thresholdの値を、飽和している場所より低くする
② Background NeutralizationUpper Limitの値を、バックグラウンドより大きくする

上の二つを変更して次のように設定しました。Upper Limitの値が大きいのは、画像の品質が悪く、バックグラウンドが十分に暗くなっていないためです。

これで、カラーキャリブレーションをすると次のようになります。カラーバランスを合わせていても、妙な色にはなりません。

ライト画像が少ないのと、フラット画像が合っていないため、ひどいものになっていますが、カラーキャリブレーションの問題は解決しました。どんな画像でもPCCが使えれば、ものによってはDSSFlatAide Proなども使うことが可能になります。


これから

Ramdiskでシステム全体の高速化も図れるし、メモリも安いので8GBx2を注文しました。PIの作業領域だけでなく、Windowstempファイルや、Chromeのキャッシュなどもここに割り当てようと思います。

ImDiskは、Windowsが立ち上がってから動き出すので、ページファイルを割り当てることはできないとのことです。しかし、メインメモリを20GB程度にしておけば、メモリスワップは私の使い方では起きそうもありませんので、問題はありません。また、スワップが起きなくてもページファイルが使われ、パフォーマンスが落ちるという記事もありましたので、ページングは無効にしようと思います。

高速化したこともあり、PixInsightを気軽に動かせるようになりました。どんな問題も、ネットで検索すれば解決のヒントが見つかります。それらの解決法をPixInsightで何度も試すことができます。これからは適当にやらないで、少しずつ課題を解決しながら、着実に上達していければと思っています。

※追記(2020/2/3)

ページングを無効にしたら、PixInsightで50枚のバイアスをインテグレートしているときにエラーが起きました。タスクマネージャーでメモリのパフォーマンスを調べると、あっという間に32GBを使い切っていました。ページングは有効にするよう戻しました。

コメント

  1. はじめまして。先日ブログにコメントをいただきました、そらちゃぐと申します。
    Pixlnsightというソフトは初めて知りました。とても参考になります!
    ちなみにすごい写真ですね!とても足元にも及びませんが、是非参考にさせてください。
    ちなみにナローバンドに挑戦なさるとのことですが、やはり難しいのでしょうか?

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  2. そらちゃぐさん、申し訳ありませんでした。コメントの承認の仕方がわかっておらず、3年も経ってしまいました。ナローバンドは、環境が変わったので、いったん諦めてカラーカメラにしました。しかし最近Askar Color MagicのD1とD2フィルターを入手しましたので、カラーカメラで再度ナローバンドに挑戦しようと思っているところです。重ねてお詫びいたします。

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