PixInsightのカブリ補正、ノイズ処理、コントラスト強調


パソコンを高速化してPixInsightの処理時間が短くなったことで、学習もはかどってきました。前回から分かったことをまとめておきます。

カブリ補正
カブリ補正はDyanamicBackgroundExtractionDBE)を使います。しかしこれまでは、大まかな補正はできますが、どうも角のカブリが平坦になりませんでした。2DBEを使うと良いという記事を読み、試しましたがだめです。さらに調べると、背景の色が急激に変化する場合は、Toleranceを高くし、smoothingを低くすると良いと記事を見つけました。横浜のような光害地では、これを使う必要がありそうです。

次のインテグレーション済みの画像で処理します。左下が特に明るく、右上が暗くなっているのが分かります。

これをディフォルトの設定のままで、DBEで処理すると次のようになります。多少は平坦になりますが、やはり左下が明るく、右上が暗くなっています。

そこで次のようにTolerance1.5と高く、Smoothing factor0.1と低くします。左下と右上には、星雲を避けながらかなり多めにサンプルポイントを打っています。

この結果が次の画面です。背景が全体に平坦になっているような気がします。
これをもとに処理をしたバラ星雲の画像です。上の画像に加え、三日間に渡って撮影した画像をインテグレーションしています。うまくカメラの回転の調整ができていなかったので、かなり小さくクロップしなければなりませんでした。そのためこの画像では良く分かりませんが、背景の問題は解決できたように思います。ちょっと星雲を強調し過ぎという感じもしますし、星像が太っているのはこれからの課題です。

ノイズ処理
これまでノイズ処理は、ストレッチした直後にACDNRTGVDenoiseというプロセスを使ってきましたが、パラメーターの意味がよく分からず、またマスクを掛けていても、星像が変化することがあり、苦労していました。

これもネットで調べていると、MultiscaleLinearTransformMLT)でストレッチ前に処理するのが良いという記事を読みました。このプロセスは蒼月城さんのビデオで見てはいましたが、どうも敷居が高く感じて使っていませんでした。記事のとおりにさっそく試してみました。次のように設定します。

次の画像の左がMLT適用前、右が適用後です。L画像でマスクを掛けています。ディテールを損なわないで、自然なノイズ削減ができていると思います。

コントラスト強調
コントラストの強調処理は、LocalHistogramEqualizationLHE)というプロセスを使います。これも蒼月城さんのビデオを2回も見たのですが、半分も理解できません。とりあえず使ってみることにしました。次のように設定しました。Contrast Limitはかなり低くしています。

HDR処理をした、オリオン大星雲の画像を使ってみます。左がLHE適用前、右が適用後です。明らかにコントラストが強くなっています。

全体の画像は次のようになります。最初がLHE処理をしていないもの、次がLHEで強調したものです。ダイナミックな構造が良く分かるようになったと思います。


PixInsightの処理の流れ
星像の処理はまだやっていませんが、これまでの経験から次のようにPixInsightで処理をすれば良いことが分かってきました。

A. バイアス、ダーク、フラットダーク画像の処理
ISOや温度ごとに、暇なときに撮影する
② インテグレーションして、それぞれのマスターファイルを作っておく
ZWOOSCカメラでは、フラットダークはいらないような気がします。CanonDSLRでは作ったほうが良いというアドバイスを、PixInsightのフォーラムでいただきましたが、これから検証が必要です)

B. ライト画像の処理
① フラット画像をマスターバイアス・ダークでキャリブレーションする
② インテグレートしてマスターフラットを作る
③ マスターバイアス・ダーク・フラットでライト画像をキャリブレーションする(ZWOOSCカメラでは、アンプグローを消すために、ダークのOptimizeをしない)
④ ホットピクセル除去、ディベイヤー、レジストレーション、インテグレーションをこの順に行ってマスターライトを作る
⑤ 複数のマスターライトがあれば、StarAlighnmentImageIntegrationで合成する。HDR撮影画像であれば、HDRCompositionで合成する
⑤ DBEでカブリ補正し、PCCでカラーキャリブレーションを行う
⑥ L画像のマスクを作り、LHEで背景のノイズを軽減する
⑦ 主にArcsincStretchを使ってストレッチする
⑧ L画像マスクで、背景を少し暗くする
⑨ StarNet++で星雲マスクを作り、必要ならLHEでコントラストを強調する。HDR合成画像であれば、HDRMultiscaleTranformで、飽和した部分を復元する
⑩ CurvesTransformationで星雲の彩度を少し強調する

これから
あまり使っていなかったCanon EOS Kiss X5SEO-SP4)を試してみました。フラットが過修正をしてしまってうまくいかず、PixInsightのフォーラムで質問したところ、詳しく教えていただきました。結局はバッチ処理を使わずに、上の手順のように、手動でインテグレーションして学習を深めることにしました。

その途中で、PixInsightの最新のバージョンでは、ディベイヤーパターンがRGGBではなく、GBRGとみなされていることを教えてもらいました。Canonのカメラでうまく処理できない場合は、ディベイヤーパターンをAutoではなく、GBRGにする必要があります。

これまでの経験から、天体写真の奥が深いことが、身にしみて分かりました。それでも素人なりに解決策を見つけることは可能であり、少しずつでも進歩していることが実感できるようになったのも事実です。これからの方向性も見えてきたように思います。鏡筒、カメラ、赤道儀のいずれかで、新しい機器にチャレンジしてみようと計画しています。

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