フラット補正の問題二つ(過剰補正と消えないリング)


前回のナローバンド撮影はとにかく、SHOパレットによる合成を早くしようとしたため、多少おかしいところは無視して進めていました。しかし、もう一度振り返ってみると、インテグレーションしたライト画像の周辺が明るくなっていました。

また、新しく手に入れたレデューサー付きの71FLでも、妙なリングが見えて原因が分からずに苦労しています。

フラット補正の問題その1(過剰補正)

次は、強調処理をしたHaのインテグレーション直後のライト画像です。周辺が明るくなっているのが分かります。前回は周辺を思い切りクロップして、ごまかしていました。

このときのフラット画像を強調処理したものです。フラットで暗くなっている周辺が、ライトでは逆に明るくなっています。フラット補正のしすぎ(オーバーコレクション)であることに、ようやく気づきました。

フラット画像は、AstroPhotography ToolATP)のCCD Flats Aidを使っていました。光源は、アマゾンで買ったA5サイズのLEDトレーサー(1,500円程度)に、トレーシングペーパーを8枚ほど重ねたものです。次のようにADU20,000にすると、露出時間はZWO ASI 294MCでだいたい1秒から2秒程度でした。

しかしフィルターがHaだと、同じ光量(3段階のうち一番低いもの)では10秒程度かかるため、光量を一番上に設定して、シャッタースピードが3秒前後になるように調整しました。71FL+フラットナーの80mm鏡筒では、フラット補正は問題なくできていました。

オーバーコレクションの問題をさまざまなサイトで調べると、原因は①フラット画像の露出過多、②フラットのダークファイルが不適切、のいずれかであるとのこと。ダークファイルは、フラットと全く同じ露光時間で作成していますので、問題はないと思いました。

これではよく分からないので、冷却CMOSカメラに絞って検索すると、オーバーコレクションの問題のほとんどは、フラットとダークの、温度、ゲイン、オフセットが異なっていることに起因すると書いてありました。

そこで気づいたのが、フラットはライト画像撮影後にその場で、ノートパソコンで撮影していました。つまり、ライトとフラットの設定は全く同じでした。しかし、フラットダーク、ダーク、バイアスは、デスクトップパソコンで暇なときに作っていました。ノートとデスクトップのAPTの設定を調べてみると、デスクトップのZWO ASIドライバーが最新でなく、デフォルトではオフセット値が見えないため何の設定もしておらず、結局0になっていました。

デスクトップパソコンにZWOのドライバーを入れ、撮影時と同じようにオフセット値を30にして作ったダークファイルを使って、コンポジットしたライト画像が次です。

わかりにくいのですが、左上が暗く右下が明るいカブリだけで、周辺減光はきれいになくなっています。これで解決しました。

フラット補正の問題その2(消えないリング)

購入したBorg 71FL+レデューサーと294 MCで撮影した、M46M47を前回のブログに掲載しましたが、こちらもよく見るとフラット補正がうまくいっていませんでした。マスターライト画像を強調すると、画面の中央左寄りに大きなリングが見えます。
  

このフラット画像は、次のようになっています。周辺減光はライト画像からうまく取れているように見えます。

円の中心がずれているのはおいておくとして、よく見るとライトのリングに対応するような、リングが薄く見えます。元のライトにも同じリングがあればきれいに消えるはずです。

フラット補正をしないで、ライト画像をインテグレーションしてみました。

ライト画像には中央のリングは写っていないように見えます。すると、フラットを撮影するときだけ、リングが写っているということになります。

これもPixInsightのフォーラムで探したところ、2年前のサイトのディスカッションに同じ現象が出ていました。レデューサーを付けた鏡筒で起きるようで、またナローバンドでは起きないとしています。この条件も一緒です。

そこでは、鏡筒内の光漏れ、強すぎるフラット光源、フラット面の反射、フィルターの反射などの原因が挙げられていましたが、根本的な解決法は示されていないように思います。

鏡筒内の光漏れは、投稿者が何度も試していました。一番怪しそうなコマコレクター全体を黒い布で覆って撮影しても結果は同じでした。71FLのような単純な屈折鏡筒では、光漏れは考えにくいと思いました。

LEDトレーサーの前にトレーシングペーパーを付けて撮っていましたが、フラット面の反射を抑えるため、Tシャツを挟んでみたり、ADU20,000から、16,0008,000に変化させてみたり(露出時間はそれぞれ、1.25秒、0.718秒、0.332秒)しましたが同じでした。それぞれのダークフラットも作っており、ライト、フラット、ダークフラットの、温度、ゲイン、オフセットは同じにしています。

フィルターはQuad BPを使い、レデューサーの後ろ(カメラ側)に入れています(前述のサイトでは、後ろに入れたらリングが消えたという証言もありました)。フィルターの反射は考えにくいと思います。光漏れがないように、ダークを暗い環境で撮影し直しまたが、同じです。

すると残るのは、フラット面の素材に関わらず、鏡筒内の何かがLEDの光を強く反射しているという可能性です。そこで、フラットナーを付けた80mm鏡筒と、レデューサーを付けた60mm鏡筒を対物側から見比べてみましたら、60mm鏡筒では、M57ヘリコイドDXII7761】の端(4mm幅)が、光って見えることに気づきました。これにLEDトレーサーの光が反射し、トレーサーに円形の模様を作っていたのかもしれません。

下手くそですが、ここに植毛紙を貼ってみました。対物レンズ側から眺めてみると、光の反射は見られず、全体にかなり暗くなっています。これでうまくいきそうな気がします。今度晴れた日に検証してみます。

これから

フラットのオーバーコレクションは、問題の所在がすぐに分かり、解消しましたが、リングの問題には苦労しています。もし、この植毛紙でもだめなら、ヘリコイドの位置を後ろに変えてみるか、60mm鏡筒をあきらめて80mm鏡筒に移行するしかないかもしれません。


※追記(2020/3/12)

昨日の晴れ間を縫って、ヘリコイドに植毛紙を貼った鏡筒で撮影しましたが、結果は全く同じでした。もしかしたら、これまでの仮説とは逆に、フラットにはないリングが、ライト画像のみにあるということも考えられます。そのときの原因は、どこかに光漏れがあって、ベランダの明るい光がライトの長い露光時間の間に入ってくる(これは考えにくいですが...)、もしくはフードが短いために外の街灯からの光が入ってくる(レデューサーによって広い範囲の光を拾うから?)でしょうか。

フラットの方にリングがあるという元の仮説に立てば、鏡筒内で強い光を反射するのは、ヘリコイドの縁以外で考えられるとすれば、Quad BPフィルターでしょうか。現在はレデューサーの後ろのEOS-T2アダプター内にあります。センサーのすぐそばですので、問題はないように思えますが、これをレデューサーに直接取り付けてみることもやってみましょう。

※追記(2020/3/13)

昨晩、フードの先に梱包材の黒い発泡材料を巻きつけ、さらにQuad BPフィルターを少し前に移動して撮影してみました。たまたま雲の合間にあったNGC3242の、インテグレーションしてカブリ補正をしただけの画像です。

リングは見えていないように思います。フィルターを前に移動したことが影響していることは考えにくく、遮光フードが好影響を及ぼしたことはぼ間違いありません。右上がカブリ補正をしきれずに明るくなっているのは、巻きつけた発泡材料の一箇所めくれていたためとすると、しっくり説明できます。

迷光対策がどれほど重要かということが分かったような気がします。ここは2階のベランダで、向かいの家には防犯用のLEDランプがあって時々光りますし、街灯も近くにあります。これまでの71FL+フラットナーでもかなりの悪影響を受けていたはずです(確かに、リングは見えませんが、カブリ補正に苦労したことが多くあります)。ナローバンドではほとんど影響が出ないということも説明できます。

これが事実であれば、これまでの問題はほぼ解決できます。これからも検証を続けますが、遮光フードは注文しました。

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