フラット補正の失敗と原因

フラット補正がうまくいかず、チリ跡がドーナツ状に残ってしまいました。今回は、空が格別に明るかったこと、フラット撮影のライト撮影の間が空いていたこと、フラットダークを事前に撮りためた、従ってフラットの撮影時間と完全に一致しないもとを使うなど、これまでと状況が違っていました。


症状

121日は月齢15.9でしたが、ナローバンドならいけるだろうと、月のそばの燃える木と馬頭星雲をHaで撮影しました。71FL+フラットナー+ASI 183MMHa3X23枚です。

一見すると問題なさそうですが、強くストレッチを掛けると次のようにドーナツがいくつも現れます。特に右上が目立ちますが、中央から左の下には、いくつものドーナツのかけらがあります。中央部と右にも薄く見えています。

これは当然ながら、フラット画像に対応しています。次も強くストレッチしたフラットです。周辺減光とチリの内部は補正されているのですが、チリの周辺部のみがドーナツ状に残っています。


フィルターホイールの回転方向か

以前にもたまにこのような現象がありましたが、毎回ではないので、あきらめていました。今回しっかりと原因を探ってみました。撮影スケジュールは次の通りです。空が明るいので、撮影時間は3分と短くしました。

18:55      プレアデス星団 Ha 312枚(ベランダのひさしに掛かる)
20:01      Haフラット 3.05秒 35
20:04      OIIIフラット 4.31秒 35
21:15      燃える木と馬頭星雲 Ha 324
22:30      燃える木と馬頭星雲 OIII 312枚(雲が出てくる)

これまでは、毎回ライトを撮影後にフラットを撮っていましたが、最後まで撮影に付き合わなければならず、面倒でした。その後、フィルターを変えてもフォーカスが変わらないことに気づき(全てZWO製のためか)、最初にまとめて撮影し、後はNINAのシーケンスに導入、プレートソルブ、ガイド開始を任せ、朝まで寝てしまおうというのが当初のプランでした。

そのため、フラットとライトの撮影の間に、フィルターの移動が入ります。そうするとこの失敗は、フィルターホイールの回転を双方向にしているためではないかと思い至りました。フィルターの位置が回転方向によって微妙にずれ、フィルター上のチリの位置もずれることになり、フラット補正が失敗します。以前にCloudy Nightsの中で、フラット補正の失敗が、これで解決したという記事を見つけたためです。調べてみると案の定unidirectionalにチェックが入っていませんでした。


フィルターのチリではない

しかし、OIIIのフラットとHaのフラットのチリ跡が、ほとんど同じであることに気づきました。次はOIIIのフラット画像を強調したものです。

右上・中央・左下のチリがHaと同じです。あまり目立たないのですが、次の、燃える木と馬頭星雲のOIII画像にもドーナツがあります。

ということは、これらのチリはセンサー側にあるということになります。センサー前の保護ガラスを清掃して、フラットを撮影すると確かにこれらのチリ跡は消えています。

つまり、フィルターの位置がずれていたから、ドーナツが残ったわけではないことになります。


原因は構図を変えたため

最初に撮った次のプレアデス星団には、ドーナツがありません。したがって、フラット画像には全く問題がないことになります。空が明るかったことや、フラットダークとフラットの時間が完全に一致していないことは、原因にはなりえません。その結果、燃える木のライトの撮影に、なんらかの問題があることがわかりました。

Cloudy Nightsでドーナツになるフラット補正の失敗例を探しました。そうすると、それまでうまくいっていたフラット補正が、ある日突然うまく行かなくなった、20173月のフォーラムが見つかりました。次の投稿画像のドーナツは、現象としては全く同じものだと思います。

https://www.cloudynights.com/topic/569243-flat-issues-out-of-nowhere/

いくつものアドバイスがありましたが、その中で決定的だったのは、オートフォーカサーのネジが緩んでいて、フォーカサーが少しずれことが原因だったとの回答です。投稿者の場合は、Alnitakのフラットボックスが、フラット撮影時つまり天頂を向いているときに、位置が下がっていたことが原因であることが分かったとのことです(詳しいことはよく分かりませんが)。なおこの種の問題では、迷光が原因ではとする主張がいつも出てきますが、これはどうも関係なさそうです。

つまり、ほんの僅かな光軸のずれがドーナツを作るようです。これがヒントになり、フラット撮影から燃える木と馬頭星雲撮影の間に、カメラを90度回転したことに気づきました。回転自体はフラット補正に影響を与えるものではないはずですが、回転装置のネジの締め方を、完全に前と同じでできるはずはありません。これによってフラット補正が失敗したのであろうことは、間違いないと思います。

 

これから

次回の撮影時に今回の考察結果を確認しますが、フラットとライトの撮影の間は、鏡筒を手で操作しないようにしたいと思います。学ばなければいけないことがたくさんあります。


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