PixInsightの新しいストレッチ方法 - GHS
GHSはGeneralised Hyperbolic Stretchの略で、日本語だと「一般化双曲型ストレッチ」になるのでしょうか。
最近、イギリスの都会からFRA400+ZWO ASI 2600MC+ L-eXtremeフィルターを使って撮影し、疑似ハッブルパレットを作り出している、Lee Pullenさんのサイト(URBAN ASTROPHOTOGRAPHY)を興味深く読んでいます。このサイトのすばるの回に、これが紹介されていました。次の画像の左下にあります。
https://urbanastrophotography.com/index.php/2022/01/14/the-pleiades/ |
Dave Payneさんが仕事で使っていたGeneralised Hyperbolic Functionを天体写真のストレッチに使ったところうまくいったため、PixelMathで実行できる数式を公開していました。そこにMike Cranfieldさんが協力して、PixInsightのスクリプトを作ったとのことです。現在はバージョン2になっており、リアルタイムプレビューができるようになりました。Payneさんのサイトにチュートリアルがあります。
https://ghsastro.co.uk/dave-payne/ |
数学的なことはさっぱりわからないのですが、ストレッチを最大化したい箇所をSymmetry point(SP: 対称点)と呼んでおり、そこを指定できる点が最大の特徴のようです。またこれに加えて、ストレッチ要因D、ストレッチ強度b、シャドウ・ハイライトポイントの、五つのパラメーターを、プレビューを見ながら指定することで、慣れればストレッチを自在にコントロールできるようです。更に面白いのは、Histogram TransformationやArcsinh Stretchなども組み込まれており、全てのストレッチ方法が統合化されていることです。
最初のストレッチ
まずストレッチ前のヒストグラムで、ピークのすぐ右側の値を調べ、それを対称点(SP)にします。この場合は、0.00243です。
この状態で、ストレッチ強度bを強くし、ストレッチ要因Dを右にずらして、ヒストグラムのピークが全体の、1/5から1/4程度になるようにします。
2回目以降のストレッチ
この後は、ストレッチ強度bは1前後と低めにし、Symmetry point SPを強調したい星雲の場所を指定します(この場合は0.43です)。私の理解では、これにより星が肥大化するのを防ぎ、背景を抑え、星雲だけを強調することができるということのようです。
必要ならこの後で、ヒストグラムの下にあるRGB/Kを外して、Satをチェックし、彩度を強調できます。
これまでのストレッチとの比較
これまではArcsinhとHTとを組み合わせ、HT->Arcsinh->HTのように使っていました。HTではどうしても、画面全体が白っぽくなり、後の処理で調整していました。左が新しいGHS、右側がこれまでのストレッチです。いずれもストレッチした後で、SNCRで緑を減らしています。
だいぶ強調しすぎているようですが、それでもストレッチでここまでできると、この後の処理がかなり楽になるのではないかと思います。
これから
数学をやったことがない老人に、GHSの原理を理解するのは無理ですので、せめてその使い方を自分のものにできればと思っています。これからしばらくは、Dave Payneさんのサイトで学習をしていきます。
※追記(2022/3/26)
GHSをインストールすると付いてくるマニュアルを丁寧に読んでいるところです。この名前の由来となったのは「ストレッチ強度b」の値によって、ストレッチ曲線が以下のように変化し、これらを統合したためにgeneralisedと名付けられたようです。なおbを大きくすることで、星が肥大化するのを防ぎ、同時に暗部のコントラストを上げることが可能になるとされています。
b=0: 指数関数
0<b<1: 双曲線
b=1: 調和関数
1<b: 超双曲線
最大の特徴は対称点(SP)であると書きましたが、これは間違いであり、強度bの曲線の方が重要だと思われます。なお対称点の左右では曲線が倒立鏡像になりますのでこう呼ばれており、S字カーブのちょうど中心に当たります。
GHSは単なるストレッチ方法ではなく、その後のグローバルな強調処理を含めたツールであると考えた方が良さそうです。Curves Transformationは再現性がないこと、1:1マッピングでない(非可逆である)ために、画像が不自然になる可能性が高いことなどから、Curvesに代えてGHSを使うことが推奨されています。
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