おとめ座銀河の処理とPixInsightのWBPPの活用
二つのはくちょう座網状星雲も、撮影時間がそれぞれなんとか10時間を超えたところです。天頂付近にあったものが、だいぶ西の空に傾いてきました。西側は東京都心に近くなりますので、そろそろ今年は終わりにしなければなりません。
特に処理する画像がないので、過去に撮影してそのままにしておいたおとめ座銀河を処理してみました。Askar FRA400鏡筒、ZWO ASI 533MCカメラ、Comet BPフィルターを使い、横浜市内で撮影した、M49と「失われた銀河」のNGC4535とNGC4526です
また、これまでのPixInsightの処理方法を見直し、キャリブレーションからインテグレーションまで、一貫してWBPPを使うように変更しました。これは、丹羽さんのサイト「たのしい天体観測」を参考にさせていただきました。
最初は無理かと
2022年2月27日に横浜市内で撮影した、42分(120秒21枚)の画像を見て、あまりにノイズがひどく、銀河にナローバンドフィルターが使えないことや、鏡筒が短焦点であることなどから、どうも私の構成ではおとめ座銀河は無理そうだと思っていました。
意外といけるのかな
3月6日に102分、15日に68分撮影してそのままにしておいた、合計212分の画像を処理してみました。これまでの方法でストレッチすると、星が飽和するので、次のような工夫をしました。
・NoiseXTerminatorはリニアではなく、ストレッチ後に行う。
これによって星の飽和がかなり防げる。
・GHS(GeneralizedHyperbolicStretch)によるストレッチでは、ハイポイント(HP)を低くして明るい部分を保護する。
GHSはもともと星が飽和しにくいが、これでさらに星の肥大と飽和が抑えられる。
意外に良く写っているのかなと思いました。左上のNGC4535には、かすかにS字の構造が見えます。M49、NGC4535、NGC4526以外にも、明らかに銀河だと思われるものがありますので、PixInsightの注釈機能を使って名前を付けてみました。NGC4488、4466、4470、IC3521です。恒星に見えるものでも銀河の場合があり、面白いものです。
背景むらはけっこうある
背景むらが目立っていましたので、かなり無理して背景を暗くしています。強調処理前の画像ですと、背景に色むらがはっきり出ています。これはいろいろな処理をしてみましたが、取り除けませんでした。
海外のサイトでは、市街地でも銀河にはフィルターを使わないほうが良いとしているところもあります。しかしComet BPフィルターでもこうなりますので、ひどい光害地ではフィルターなしでは無理ではないでしょうか。
それとも時間をもっと掛ければ、背景は均一になってくるのでしょうか。これから機会があれば、おとめ座銀河団の他の銀河にもチャレンジしてみようと思います。
PixInsightのWBPPを全面的に使うように
これまで、WBPPはキャリブレーションまでで、その後は手動で、サブフレームセレクション(SS)で画像の選別、スターアラインメント(SA)、ローカルノーマライゼーション(LN)、インテグレーションを行っていました。
しかし、丹羽さんのサイト「たのしい天体観測」で、WBPPの評価アルゴリズムPSF Signal Weightが強力で、SSでの画像選別は不要との記事を読み、目から鱗が落ちる思いでした。その方が、多くの画像をインテグレーションできて、最終画像の品質が向上するということです。
前回、L-eXtremeフィルターによるハロが、IDAS NBZフィルターの画像と一緒にインテグレーションすると見事に消えたのは、このメカニズムのようでした。
そこで、丹羽さんの質問サイトでいろいろとやり取りをさせていたただいている間に気づいた、以下のような自分なりの方法で処理するようになりました。
1. 個別WBPP(キャリブレーションだけを、撮影した日毎に行う)
Subframe Weightingを行わない
レジストレーション, LN, インテグレーションを行わない
Blinkでディベイヤー画像をチェック
よほどひどいものだけを除外して、ディベイヤーファイルを保存
2. 全体WBPP(キャリブレーションを行わないで、最終画像を作る)
全てのディベイヤーファイルをlightsに指定
ダークもフラットも指定しない
Lightsタブ
Subframe WeightingでSNR Signal Weightを選択
LNとインテグレーションを行う
Calibrationタブ
CFAのチェックを外す(これでディベイヤーが行われない)
これまでは、日毎にインテグレーションを行ってマスターを作り、最終的に複数のマスターをインテグレーションして最終画像を作っていました。しかしこれですと、個々の画像の評価の情報が失われてしまいます。マスター毎のSNR情報だけを反映してインテグレーションしますので、元データを反映した画像にはならないわけです。
この変更によって、煩わしい手動のインテグレーション操作が不要になるだけでなく、画像品質も向上することになるのではと期待しています。
なお、見落としてひどい画像をWBPPに放り込んでも、bad frames rejectionという機能が追加されており、自動的にこれらを排除してくれますので、この点でも選別に気を遣う必要がなくなったといえます。
これから
はくちょう座網状星雲の撮影をそろそろ終わりにし、画像処理に移るとともに、次の撮影対象を探そうと思います。なるべく天頂にいる時間が長いものを選ぼうと思います。そのためにも、AM5の延長筒を購入して、鏡筒と三脚の衝突が起きるのを防ぐようにしなければなりません。
コメント
コメントを投稿
コメントはこちら