デュアルナローバンド画像のハッブルパレット風超簡単処理の系譜

輝線星雲を対象とするときは、ZWO ASI 533カメラにIDAS NBZフィルターを付けて、HaOIIIのデュアルナローバンド画像を撮影しています。これまではモノクロカメラを使ってベランダから撮影していたのですが、引っ越しをしてベランダが使えなくなりました。団地前の公園に機材を運び出す必要があり、1日の撮影時間はせいぜい23時間に限られるようになったのです。撮影時間が3倍以上かかるモノクロカメラは使いにくくなり、ワンショットカラーカメラに変更しました。また、都内であることと、公園の三方が団地で明るいことから、通常の光害カットフィルターでは役に立たないと思われるため、ハロがほとんど出ないこのデュアルナローバンドフィルターに行き着きました。

しかしデュアルナローバンド画像に通常の処理をするだけだと、Haの信号が強いために赤が支配的になり、あまり面白くありません。ところが、これをハッブルパレット風の鮮やかな画像に簡単に変換することができるという動画を見つけ、その劇的な効果に驚きました。次の二つの動画が参考になりました。これらはいずれも、PixInsightのスクリプトをドラッグ・ドロップするだけという、超簡単な方法を使っていました。そのため、この処理方法のルーツをすこし詳しく探ってみることにしました(それほど大げさではありませんが)。

 (1) Cuiv, The Lazy Geek

BACK TO ASTRO!! Color camera & Single Night vs California Nebula!
https://www.youtube.com/watch?v=c1-DaPtqr60

 (2) astrojourneyuk

Creating an SHO image from HOO data using PixInsight
https://www.youtube.com/watch?v=Qb0jXcCq8nU

Luke NewbouldさんのSHO風処理

ハッブルパレットは、SIIHaOIIIの信号をそれぞれRGBに割り当てますので、SHOパレットとも呼ばれますが、デュアルナローバンド画像は、HaOIIIだけであり、SII画像がありません。これをなんとか三つの画像にしてSHOに近づけるのがポイントになります。この処理方法のルーツが、Luke Newbouldさんが編み出したものです。なお、類似の方法はいくつもありますが、Lukeさんのやり方が後の超簡単な処理方法につながっています。まず、ストレッチした後の画像(ノンリニア画像)から、スターレス画像(星雲画像)を作り、これをSHO風にしていきます。スター画像はそのままにして、後で合成します。

(1) RGB分離してノイズの多いBを捨てる
  (RSIIGOIIIと考える)

(2) OIIIを強調して、明るさとコントラストのレベルをSIIに合わせる

(3) SII*0.6OIII*0.4の式で、Haを作る

(4) L画像=SIIR=SIIG=HaB=OIIIで、LRGB合成する

この後で、青緑色と黄金色を強調していき、次の図の下(スターレス)や右側(星の合成後)のような画像にしていきます。

OSC Narrowband Processing Guide - As Quick As Possible!
https://www.youtube.com/watch?v=lT1fXqR82_M

Bill Blanshanさんのスクリプト

このLukeさんのSHO風処理プロセスを、許可を得て再構成し、PixInsightのPixelMathスクリプトとして作ったのが、Bill Blanshanさんです。明るさとコントラストのレベル調整(ノーマライゼーションと呼んでいる)とSHO合成、さらにはマスク作成スクリプトなども作られており、次のサイトで公開されています。

Narrowband Normalization using PixInsight Pixelmath
https://www.youtube.com/watch?v=PpIOSSj4L5g

この
Billさんの動画の、PixInsight画面の左側にある複数のアイコンがPixelMathスクリプトです。これを画像にドラッグ・ドロップするだけで、レベル調整からSHO合成まで、一瞬でできるようになっています。また黄色マスクと青マスク作成スクリプトをドラッグ・ドロップしてそれぞれのマスクを作り、黄金色と青緑色の強調処理を簡単に行うことができます。

このスクリプトには調整可能なパラメーターがあります。これから、これらをいじってみてその効果を確かめていこうと思っています。

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