輝星が星雲側に分離される問題

StarXTerminatorでスターレス画像を作ると、輝星が星雲側に分離されるため、スターレス画像のマスクから、輝星を手作業で消していました。次のスターレス画像の、上部の左右に二つの輝星が残っています。下部の両側にも、星の跡があります。

GHSストレッチ後にStarXTerminatorを掛けることが原因

あまりに面倒なので、この原因を検索してみると、なんとStarXTerminatorのページにしっかりと書いてありました。

https://www.rc-astro.com/resources/StarXTerminator/

StarXTerminatorMTFmidtones transfer function)でストレッチされた画像を使って学習しており、なおかつリニア画像をMTFストレッチして処理し、その後で元のリニア状態へ戻すという作業をしているとのことです。

PixInsightHistogramTransformation は、MTFと同じ方法を使っていて、このストレッチとは相性がいいのですが、これと全く異なるストレッチ方法(arcsinhGHS)では、星のプロファイルが大きく変更され、輝星と小さな楕円銀河が区別できなくなるとのことです。私はストレッチでgeneralized hyperbolic stretchGHS)を使っていました。GHSは、星の肥大化と過飽和が防げ、星雲の構造がより良く残るとされています。

GHSでストレッチする場合は、リニア状態でStarXTerminatorを実行しなければならなかったのです(そのときUnscreen Starsオプションは無効)。むしろ、StarXTerminatorはできるだけ早く、ストレッチの前に掛けるべきであり、その方が良い画像になるとのことでした。説明はしっかり読むべきでした。

リニア状態でスターレス画像を作ってからGHSストレッチ

リニア状態でStarXTerminatorを掛け、スターレス画像(星雲画像)にGHSでストレッチすると、輝星は星雲画像から見事に消えていました。


GHSのストレッチをPixelMathスクリプトで簡単に

しかし今度は、星雲画像と星画像の両方にGHSを掛けなければなりません。GHSはスクリプトからプロセスに「昇格」して使いやすくはなったのですが、まだまだ面倒です。これを簡単にできるようにしたいと調べているうち、前回のSHO風処理スクリプトを作ったBill Blanshanさんが、GHSPixelMathスクリプトを作ってくれていました。次のようにD, bのパラメーターを変更していますが、これで問題ないようです。

画質は向上するか

StarXTerminatorのページでは、リニア状態で掛けるほうが画質が良いとしていますので、比較してみました。まずGHSのストレッチ後に星雲を分離してさっと仕上げた、従来の画像です。


おたまじゃくしはぼやけていて、全体に細部の情報が失われていると思います。都内の光害地とはいえ、970分(16時間10分)も掛けたことを考えると物足りません。そのため、その後何度も(10回以上)試行して、多少満足できるようにしたのが次の画像です。無理して強調していますので、全体にゴテゴテしています。


これを、リニア状態で星雲を分離してから、GHSでストレッチして、簡単に強調したのが次の画像です。無理して強調していないのに、星雲の細部が残されているような気がします。

PixInsightの処理フロー

まだ完全に満足できるわけではありませんが、最後の画像が一番しっくりきます。StarXTerminatorは、リニア状態で実行しなければならないことが分かりました。そのため、PixInsightの処理フローを次のようにすることにしました。

(1) Weighted Batch PreProcessing(WBPP)スクリプトでインテグレーションまで行う
        
ダークとフラット補正
        
コズメティック・コレクションでホット・クールピクセル除去
        ディベイヤーでカラー画像化
        
レジストレーション(位置合わせ)
        
ローカル・ノーマライゼーション(良い画像で背景を均一化)
        
インテグレーション(コンポジット)と自動クロップ
(2) BlurXTerminator
でデコンボリューション
(3) Dynamic Background Extraction(
DBE)で背景の均一化
(4) Spectrophotometric Color Calibration(SPCC)でカラーキャリブレーション
(5) StarXTerminatorで星と星雲の分離
(6) GHSで星と星雲をストレッチ(ノンリニア化)
(7) 星画像の処理
         緑除去(Blanshanさんのスクリプト)
         Curvesで彩度の強調
         Morphological Transformationで星像縮小
(8) 星雲画像の処理
         NoiseXTerminatorでノイズ削減処理
         SHO風に変換(Blanshanさんのスクリプト)
         Lマスク・黄色と青のマスク作成Blanshanさんのスクリプト)
         Lマスクで明度の強調
         黄色マスクで赤と緑の強調
         青マスクで青の強調
         Lマスクで彩度の強調
         Local Histogram Equalization(LHE)で星雲の細部構造を強調
         Histogram Transformation(HT)でブラッククリップ
(9) PixelMathで星雲と星の結合

まとめ

なんとか画像処理プロセスが落ち着いてきたように思います。BlurXTerminatorStarXTerminatorなどのアドオンや、Blanshanさんのスクリプト、それからパソコンを高速化したことで、処理がだいぶ楽になったと感じています。

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